キーウェアソリューションズ株式会社

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医療法人社団日高会 日高病院様

Medlas-SHIPL導入事例

医療法人社団日高会 日高病院様 は人口35万人の群馬県高崎市にある病床259床の地域医療支援型病院です。日高病院様は地域の医療ネットワーク構築を推進するために病病連携と病診連携を積極的に進められており、病院玄関ロビーに地域の先生方の施設内容を記載したパンフレットを設置するなど随所に日高病院を訪れた地域住民の方々への医療情報提供に対する配慮が見られます。「患者様の満足を第一に考え、質の高い医療を提供する」を理念として地域に密着した患者様本位の安心・安全な診療を実践されておられます。

このような方針の下、院内感染対策にも取り組んでこられましたが、繁雑化、過重化傾向にある検査業務のなかで、院内感染監視システム(Medlas-SHIPL)を導入頂き、効率と精度の両立を実現されました。感染対策委員会を中心とする先生、看護師、薬剤師、検査技師の方々のご努力によって高精度でかつ効率的な感染対策を実現させ、患者様の安全、安心確保に努めておられます。

今回、日高病院様がMedlas-SHIPLを導入した経緯とその効果について、臨床検査室技師長の八束眞一氏にお話を伺いました。

感染対策の取組み

病院の院内感染委員会は各病棟の看護師3名、検査技師2名、薬剤師4名、医師12名、その他のスタッフを合わせて43名で構成され、毎日の細菌検査結果データ収集、分析は検査室が中心となって実施しています。
当院の検査室は6名の態勢で運営しています。
生化学、血清学、血液学、輸血、一般、生理学など多種の検査を実施しています。検査技師を特定の検査に専従とせず多種多様な検査に対応させていること、また、最近は患者さんの満足度を高めるために診療前検査が多く取り入れられ検体数が増加傾向にあることなどにより検査室の業務はより複雑、かつ過重になりつつあります。
業務の効率化を図るためマンパワーを必要とする細菌検査は外注委託しています。

一方、全国で耐性を示すさまざまな菌による院内感染症の事例が後を絶たないことから当院においても分離菌サーベイランスの強化は不可欠と考えました。
しかしながら人手による分離菌サーベイランスの集計、解析には限界があります。

システム導入前は特定の監視菌(MRSA、緑膿菌、セラチアの3種類)に限定した分離率を調査するために市販ソフト(ファイルメーカーPro)を用いてサーベイランスに必要な情報を手入力していました。具体的には検査依頼伝票から患者氏名、病棟名、材料など、検査結果到着時には菌名、感受性結果などの入力に合わせて毎日約1時間、更に月一回、前述の監視菌の発生数、耐性菌の集計、解析結果を院内感染委員会報告資料に纏めるのに約1時間かかっていました。両者合計すると月に約26時間を要し大きな負担になっていました。また、院内感染症の原因が多剤耐性の常在菌、環境菌であることからすると3種の監視菌のみではサーベイランスの精度の点からも限界を感じていました。厚生労働省の保険診療機関(基本診療料)の設置基準の要件においても検査室が中心になって疫学的調査をすることが求められていることもあり、電子化システムの導入は不可欠であると考えました。平成16年より協力医療機関として厚生労働科学研究費補助金の研究に参加、この研究によって開発されたSHIPL(中小規模病院感染症対策システム)がこれらの要件を満足すると考え導入に踏み切りました。
その後、全ての抗菌薬に対する全ての耐性パターンから同一のパターンを示すグループを自動的に集計し、カラーコードとして2次元(病棟・病室、時間)にマッピングするとともに、患者動線を加味して表示することで同一菌株による感染症の疑いを察知する新機能を実現したMedlas-SHIPL(キーウェアソリューションズ(株)が製品化)を平成21年7月に導入することにしました。

システムの導入効果

細菌検査結果データの入力自動化

SHIPLの導入効果の1つに検査結果がリアルタイムで自動送信されることが挙げられます。従来の依頼方法と同様の手順で検査依頼を行うと、検査センター側で依頼情報を入力し、検査終了後直ちに検査結果が送信されてきます。検査を依頼してから結果報告が送信されてくるまでの所要時間は、院内で検査を実施しているのと殆ど変らないと判断しています。また、結果検索もシステム化されているため簡単にできるようになりました。

高精度高効率の集計・分析

SHIPLは、院内で発生した全ての菌の集計・分析を瞬時に行うことができます。当院の場合、SHIPL導入前は院内発生菌の全てを監視することが困難であったため、MRSA、緑膿菌、セラチアの3菌種を院内監視菌と称して市販のソフト(ファイルメーカーPro)を使って集計・分析を行っていました。検査依頼情報、検査結果は毎日手入力で行わなければならず、集計・分析も院内感染対策委員会に提出するために月1回行うのが限界でした。SHIPL導入後は、これらの作業は全てSHIPLで対応できるようになりました。院内発生菌の全てについて集計・分析が行え、異常集積を早い段階で察知することが可能になりました。操作も非常に簡単であること、わかり易い集計・分析機能であるため同一菌株拡散の疑いも迷うことなくICD(感染管理医師)に報告できるようになりました。

JANISへの参加

SHIPLは、JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)の検査部門サーベイランスデータ作成機能を持っています。簡単な操作でデータを暗号化して送信することができ、JANISからは還元情報として自施設と全国施設を比較したデータをもらうことができます。当院もSHIPL導入後の2007年7月よりJANISの検査部門サーベイランスに参加しています。自施設で発生した問題菌などが他施設と比べられることは、院内感染対策を進めていく上で有益な情報です。

当院で利用している主な集計機能と分析機能

菌異常集積

当院では、院内感染を未然に防ぐ目的で毎日利用しています。院内から検出された全ての分離菌が指定期間内でどの程度集積があったかを集積数と警告レベルで表示します。
1~2分程度の閲覧時間で異常集積の有無を確認できるため、毎日の業務に取り入れることができ、院内拡散を最小限に抑えることが可能になります。

菌異常集積機能画面

集計された検査提出患者数とそのうち陽性であった患者数、あらかじめ設定(自施設あるいは他施設データから算出)したBaseline rate(菌の分離率)からそのような菌の分離が全く偶然だけに左右されて発生する確率を自動的に算出し、確率が低い場合、人為的な介在(院内伝播など)があったと自動的に判断し、設定された閾値によって警告レベル1(危険)から3(非常に危険)で表示(赤枠)します。

院内感染状況マップ

この機能によって、病棟別の問題菌陽性者数、患者リスト(患者名、提出日、検査材料、診療科、主治医など)を確認することができます。万一、院内拡散が発生した場合、原因究明を行う上で重要な情報となります。
当院では、上記のほかに院内監視菌(MRSA、緑膿菌、セラチア)の月ごと病棟別集計を行い、院内感染対策委員会に提出、報告して院内感染対策の意識強化に利用しています。

院内感染状況マップ画面

院内感染状況マップによって病棟別の問題菌陽性患者数や、陽性検体数が瞬時に表示されます。問題菌陽性数にマウスを合わせると陽性を示す菌種が表示され、更にダブルクリックすると患者名、検査提出日、検査、材料、菌量、病棟、病室、主治医などの情報が表示されます。この情報は異常集積、2次元カラーコードキャリアマップでも確認することができます。

感染情報レポート

この機能を使って、検出された菌の感受性パターンを知ることができます。S・I・Rがそれぞれ青、黄、赤に色分けされ受性パターンが見やすく表示されます。
当院では、検査室(検査技師)で異常集積が疑われたときに、院内感染状況マップの資料と一緒にICDに提出して判断を仰いでいます。幸い、当院では院内拡散の事例はありませんが、今までに数回、検査技師レベルで異常集積を疑いICDに報告したことがあります。その際、この資料があることで速やかな判断を行うことができました。Medlas-SHIPLでは2次元カラーコードキャリアマップ機能が新規搭載され、SIRパターンの分類が自動化されたので今後は確認などに利用することになるでしょう。

感染情報レポート画面

2次元カラーコードキャリアマップ(2DCM)

この機能は、同一菌株の院内拡散の存在を検査技師レベルで判断できるように開発されたものです。SHIPLが製品版Medlas-SHIPLとして発売されたときに搭載された機能です。
当院は、すでに菌の院内拡散が殆ど発生していない状況であるので導入後の実例はありませんが、この機能を利用することで検査技師レベルさらには専門でない医師や看護師でも同一菌株の拡散を判断することが可能であると考えます。

2次元カラーコードキャリアマップ画面

全ての抗菌薬に対する薬剤感受性パターン(antibiogram)を利用して同一菌株である疑いが濃い菌のグループを自動的に集計、カラーコード化し、患者動線を含めて2次元(病棟・病室と時間)にマッピング表示させています。

院内感染対策委員会への提出資料

SHIPLは、このほか年間推移表(グラフ)、病棟別分離菌集計、診療科別分離菌集計、菌種別感受性分布などの機能を持っています。当院では、これらを院内感染対策委員会に報告、提出して院内感染対策の意識強化を図っています。

院内感染対策委員会への提出資料各図

考察

病院検査室の業務が繁雑化する中で、手間ひまのかかる検査を外部委託(外注)する医療機関が増えてきています。通常、外注した検査は印刷された報告書が配達されるか、システム化されて依頼元の医療機関から検査データを閲覧できる仕組みとなっています。細菌検査を外注している医療機関では、報告書が配達される運用が殆どです。細菌検査をシステム化できない理由は、依頼情報が複雑(入力すべき事項が多い)であること、依頼件数が少ないためにコストが釣り合わないことなどが考えられます。
SHIPLは、外注先が検査依頼情報を入力し検査結果と一緒に依頼元の医療機関に送信してくれるためデータ入力は不要です。送信されたデータは蓄積され、SHIPLの持つさまざまな集計や分析機能で院内発生菌のサーベイランスを行うことができます。システムを利用して外注先と医療機関が連携を図ることで、業務の効率化と高精度なサーベイランスを実現することができました。

SHIPLを導入したことで細菌検査の外注化のメリットが活きたままデメリットが補正され、さらに院内感染サーベイランスが高精度・高効率に行えるようになりました。細菌検査の外注化が進み、院内感染サーベイランスを検査室が中心となって行うことが要求される中では、SHIPLのような電子化システムは最適な機能を持つと考えます。

Medlas-SHIPLは厚生労働 科学研究費補助金の研究によって開発されたSHIPL(中小規模病院感染症対策システム)の機能を継承、その後更に院内感染監視機能の強化(2DCM、警告スコア累積)、操作性などの改良を加えて高精度の「院内感染監視システム」として製品化したものです。

Medlas-SHIPLについては こちら をご覧ください。

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